About SUIDEN STYLE
旅の余韻をくらしの中に
SUIDEN STYLEは
SUIDEN TERRASSEのオンラインストアです。
旅の瞬間だけではなく
その前後のくらしを彩り
人生を豊かにしてくれる
山形庄内のいいもの・いいことをお届けします。
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旅の瞬間だけではなく
その前後のくらしを彩り
人生を豊かにしてくれる
山形庄内のいいもの・いいことをお届けします。
スイデンテラスが選んだ、いいもの、くらしのもの。
おすすめの商品を選びました。ぜひお気に入りの逸品をお探しください。
おいしいもの
くらしのもの
スイデンテラス
オリジナル商品
出羽三山から庄内平野、そして日本海へ。
山形県庄内地方は、豊かな自然の恵みで満たされた土地です。そして、この土地を象徴するランドスケープである水田から着想を得て生まれたホテルがSUIDEN TERRASSE。
田んぼに浮かび、周囲の山並みや田園風景に溶け込むような佇まい。この場所で、山形庄内を味わう時間を提供しています。
スイデンテラスが届ける、いいこと、大切にしたいこと。
作り手だからこそ知る商品の楽しみ方や、山形庄内のくらしについてお伝えするコラムです。
山形県庄内地方を拠点に「普段使いの暮らしに馴染む器」を制作している陶芸家の土田英里子さん。作品づくりだけでなく陶芸教室やマルシェなど、精力的に活動しています。器を通して庄内の魅力を伝えたいという土田さんの思いに共感し、開業当時からスイデンテラスの館内SHOPでも作品を販売しています。その器はシンプルでありながら寄り添ってくれるような温かみがあるとお客様にも好評です。土田さんがどんな人なのか、どういう思いで制作をしているのか知りたいというお声もあり、この度インタビューをさせていただくに至りました。京都での作家活動を経て、故郷庄内に戻って制作を始めたきっかけとはなにか。また、土田さんにとって庄内の自然や風土と器作りの関係性についてお話を伺いました。 使う人がいて、載せる食があって、器がある幼い頃からものを作ることが好きだったという土田さん。「高校生時代、雑貨好きが高じて松ヶ岡の陶芸教室(山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡)に行ったのが陶芸との出会いでした」そこでの体験が忘れられず学校の先生にも進路相談したところ、松ヶ岡の陶芸教室でもちょうど募集を掛けようとしていたというタイミングだったため、その陶芸教室に就職することができたそう。「そこで2年程働いていましたが、ものづくりの面白さを改めてちゃんと勉強したいと思うようになりました。当初は陶芸が盛んな滋賀に行く予定でしたが、滋賀で出会った京都在住の方に導かれ、京都の陶芸学校で学ぶことにしました。京都も職人の手仕事を幅広く学ぶには非常に良い環境だったので、巡り合わせをありがたく思っています。その頃には陶芸家としてやっていこうと決めていました」その後、京都で陶芸家として活動して10年程経ったころ、庄内に帰りたいと考え始めたのだそう。なぜこのタイミングで帰郷を考えたのか。そこには陶芸家として続けるための大きな理由がありました。「30代になって腰を据えてものを作りたいと思ったのがきっかけです。10年京都に居たのでそれなりに住みやすさも感じていたんですけど、今後本当に腰を据えることを思うと生まれ育った街に帰ろうかなと思いました」土田さんが故郷に戻ったのは2014年。東日本大震災(2011年)が起こった後でした。震災は山形県内にも被害をもたらし、人々の生活にもまだ大きな影響が残る時期でした。そのような中でも苦難を乗り越えようと奮闘していた方たちに出会い、胸を打たれたそう。帰郷して改めて庄内や鶴岡の良さを感じていると、土田さんは感慨深い表情で話します。「震災が故郷に意識を向けるきっかけになって、庄内にUターンした同世代の方も多かったんです。戻って来た人たちは地元の作家や農家、飲食店が集うマルシェを開催したり、地元の食材を使った料理を紹介したりと、いろんなイベントを企画して精力的に動いていました。当時の私はギャラリーがなく、それらのイベントで作品を販売させていただきました。今思えば、色々な方とのご縁をいただき、お客様との出会いもあって改めて故郷に戻って良かったという実感がありました。また数々のマルシェに出店して、作家はただ作って販売を繰り返しているだけではないと感じました」マルシェではどんな人がどんな風に使ってくれているのか、お客様の反応を見られることが嬉しいと話す土田さん。地域の人々の関わりを通して、以前にも増して器を「使う」ことを大切に考えるようになったとのこと。[撮影:土田 貴文氏]「販売だけでなく、陶芸教室では自分で作った器に料理を載せて食べてみるというイベントをやっています。販売だけの企画じゃなくて、使って食べるところまで楽しむという、食と組み合わせて器を楽しむことを目的としています。『これに〇〇を盛って食べる会をしましょう』と具体的に言葉にすると、興味を持ってくれる方も多いし面白いものができたりするんです」地元の飲食店とコラボレーションしたり産直や呉服店で展示を行なったりと、毎月のようにイベントを開催し、器を通して庄内の人、自然、食の魅力を感じられる機会を作っています。「夏であればビアカップを作って小鉢の料理をおつまみにビールを飲みましょうとか、フレンチレストランでは私が作ったシンプルな器にシェフが講師となってメインディッシュを綺麗に盛り付ける、盛り付け講座をして楽しんだこともあります。他には花器を作って花を活けてみたり。地域のお店と一緒に作る日・使う日を設けてイベントをやることで、作家としての幅が広がりましたね」マルシェや陶芸教室での出会いを通して、これまで以上に環境や人との出会いに感謝するようになったそう。その思いは土田さんの制作活動にどう影響を及ぼしたのでしょうか。 豊かな自然と食に囲まれ湧き上がる創作意欲[撮影:土田 貴文氏]その時々の環境が作品に影響し、四季折々の田園風景を始め、景色や食材からインスピレーションを受けることも多いと話します。「ものづくりには作り手が暮らす環境がすごく出ると思うんです。その時自分が感じたことが作品に出るなと感じています。田んぼが日に日に成長していく景色とか、自然が四季ごとに移り変わるその風景には飽きることがありません。そういう環境でものづくりができることは本当に幸せだなあと思います」しかし庄内は四季がはっきりしている地域ゆえに、冬は粘土が凍ってうまく焼けなかったり、乾かないために制作のペースが落ちてしまうという苦労もあると言います。また庄内は火力に耐えられる陶芸用の土がほとんど採れないことも含め、環境や気候が必ずしも陶芸には適さないことは、ある意味では土田さんにとってプラスになっているそうです。「自分に合った、ずっと使っていた信楽焼の土を取り寄せて今でも使っています。本来は土があって焼き物を作るのが陶芸家の本来の姿なのかもしれないけど、材料が採れない所でものを作ることで、作ることに対する姿勢を大事にできたり、ここで作ることの意味をより意識して作らないといけないと、ここ最近は特に思います。輸送費を掛けて粘土を運んで、わざわざここで焼いて作品にするということの責任というか、『ものを作らせていただいている』という意識で、大事に大事に形にしていきたいなと思いますね」また土田さんに庄内の良さを伺うと、返ってきた答えは食文化のすばらしさ。庄内は海と山に囲まれ春夏秋冬の旬が楽しめる、食の豊かな地域です。その中でも土田さんは地産地消や郷土料理を大切にしている飲食店によく足を運ぶそう。器を作っているということもあり、料理を食べに行くと器と食の関係を深く考えられるのでとても良い刺激を受けると言います。「飲食店に行くだけでいろんなことが吸収できるので、最高のエンターテイメントです。制作した器を使ってくださっているrécolt(※1)や日ごと(※2)では、季節によって全然違うものが出て来るうえに毎回進化していて、庄内の食材を使っていろいろなものを見せてくれるのでそこが一番刺激になります。庄内には美術館などはあまり多くありませんが、そういった庄内の食材を使った飲食店が庄内の人の心を育てているとも思います」 器と食は切っても切れない関係。庄内は季節の旬を活かした郷土料理や修験道がある出羽三山の精進料理が今も尚受け継がれています。それらの料理は家庭料理としてだけでなく、飲食店でも提供され庄内の人々に愛されているのです。庄内の魅力が形となった器日々感じている庄内の魅力を作品に落とし込み、それを届けるのが使命だと感じている土田さん。そしてその想いは、写真家でありオンラインショップ‘‘日々のうつわ店’’を共に経営する旦那様も同じだと語ります。「夫婦でオンラインショップを始める時にも改めて、『器を売るだけでなく、庄内で生まれたものを届けるのだ』という気持ちでやりたいと思いました。本来であれば手に取って選んで見てほしいものではあるんですけど、遠くにいる方に届けたいと思った時に、こういう庄内の環境があって生まれたものだと一緒に感じてもらえるようにしたいと思っています」作っているその場の空気を伝えたいという心意気はまさに作家らしく、作品にそのまま落とし込まれています。「今は形を揃えるとか綺麗に作るということよりも、ろくろを引いて形をつくり出すときの勢いが大事だと思っています。頭の中のイメージを無心で形作るように、手の動くままに作るようにしています。個体差は少し出てしまいますが、無駄な手数を減らしていくことが、結果的に良い作品に繋がります。土自体に温かみがあるので、華美な装飾もしません」高さと幅を揃えるため一般的に使われる「とんぼ」という定規のようなものを、最近はあえて使わないようにしているという土田さん。土田さんの器を手に持った時に感じる納まりの良さやしっくり来るという感覚は、自然素材である土を使用しているというだけでなく、人間の直感で生み出されたからこそ感じるものなのかもしれません。またこれまでの経験で積み重ねたことが現在の環境と掛け合わされることで、良い作品を生み出せていると言います。「陶芸家としてこれまで続けてこられたのはいろんな人とのご縁だとか、自分でも驚くような偶然がたくさんあったから。今振り返ると京都にいた時に師匠が見せてくれた手の動き、当時出会った数々の海外の作品が自分の中に沁みついていて、それは何を作っていても今も変わりません。そこから今、庄内で見た景色や感じたことが模様や形になって出てくると感じています」「子育てしている最中は100%を仕事に注ぎ込めないので、周りへ羨ましさや歯がゆさを覚えることもあります。その中でも母になったからこそ作ることができた作品もありました。どんどん変わっていく環境の変化も素直に受け止めて作品に出せたらと思います」様々な葛藤がありながら、その苦境さえも作品に活かしていこうという姿勢は陶芸家としての力強い意志や覚悟を持っているからこそ貫けるのかもしれません。積み重ねた経験と知識、日々美しく変わりゆく庄内の環境がもたらす土田さんの器は、今後もますます魅力を増していくでしょう。庄内にこだわり生み出される土田さんの作品は、館内SHOPで購入いただけます。ぜひ日々の生活の中でお使いください。PROFILE------------------------------------------------------------------ 土田 英里子(つちだ えりこ)氏山形県鶴岡市出身。高校卒業後、京都府陶工高等技術専門学校図案科へ進学。同校卒業後、京都茶碗坂の陶工 三島光夫氏に師事。2014年鶴岡市に帰郷。庄内地域を中心に展示、陶芸教室を開催し、マルシェにも出店している。(※1)Italian French récolt(レコルト 山形県鶴岡市山形県鶴岡市大塚町21-2)庄内の地元食材を使用した独創的なイタリアンとフレンチを楽しめるお店。食材そのものの味を活かしたコース料理が評判だそう。(※2)日ごと(ひごと 山形県酒田市本町3-1-5)庄内の野菜を中心とした、家庭料理を気軽に楽しめるカフェ。心と体に染み渡るような、菜食のやさしい味を提供しています。
「生まれ故郷にアイデンティティを持ち、本物へのこだわりは未来のために」 鶴岡シルク株式会社 代表取締役 大和 匡輔 氏SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 総支配人 中 弥生国内最北限の生産地として今から150年前に鶴岡市羽黒地区松ヶ岡で始まったシルク産業。旧庄内藩士3,000人が開墾したこの地で今、シルクの本当の価値が見直され、海外からの注目が高まっています。「シルクは鶴岡のアイデンティティ」と迷いなく語る鶴岡シルク株式会社 代表取締役 大和匡輔氏、そして「ホテルを拠点に山形庄内の魅力を世界に発信したい」と語るSUIDEN TERRASSE総支配人 中 弥生の対談をご紹介します。「本物」であることのこだわり根底にあるのは利己ではなく利他の精神 SUIDEN TERRASSE 総支配人 中 弥生(以下、中)この度はお時間をいただきありがとうございます。今回対談を掲載する当館のオンラインストア「SUIDEN STYLE -旅の余韻をくらしの中に-」は昨年8月にリニューアルオープンしました。ホテルとして、どういうサイトであるべきか、そしてありたいかと考えたときに、シンプルに「山形庄内旅で体験いただいた地域や食、人や文化の魅力を、旅から戻った日常生活の中でも体験いただけるサイトになりたい」そう考えました。旅で出会ったモノ・コトを、一度で終わらずに日常生活の中でも愛していただくためには、高い判断基準があるのではないかと思います。だからこそ、オンラインサイトでは「自分たちが本物だと思う物」を紹介し、販売したいと思っています。今日は「本物」をキーワードに、企業の取り組み、人、商品などについて大和社長から、お話を伺いたいと思ってます。鶴岡シルクさんの商品は品質はもちろんのこと、企業としての取り組みも本物であると感じています。まずは企業として「本物であること」をどうお考えになりますか?鶴岡シルク株式会社 代表取締役 大和 匡輔氏(以下、大和)そんな風に仰っていただき大変恐縮です。「本物」の判断基準はいくつかあると思いますし、人それぞれの観点もあると思いますが、私たちが取り組む鶴岡の絹産業を「本物」と考えるのであれば、その一つは庄内に養蚕から縫製まで絹産業の全てのサプライチェーンがあることでしょうか。元々は原生林だったここ松ヶ岡地区(鶴岡市羽黒町)を、1872年(明治5年)に戊辰戦争で敗れた旧庄内藩士3,000人が刀を鍬に代え開墾を始めたのが鶴岡シルクの始まりです。 彼らは蚕室を始めとした近代養蚕農家の基礎を築いた田島弥平(注1)に教えを請い、鶴岡出身の大工棟梁・高橋兼吉(注2)が世界一の規模と言われる蚕室を作り養蚕を開始しました。そして武士の娘たちは、富岡製糸場(群馬県富岡市/2014年に世界遺産に認定)(注3)で製糸を、桐生市(群馬県)で絹織物を修行したんです。そして娘たちが工女として戻って、鶴岡市内で製糸と絹織物を始めた歴史があります。松ヶ岡はわずか150年という、絹産業において日本で最も歴史が浅い地域ではありますが、先人たちはフィラデルフィア万博(1876年)やパリ万博(1889年)に作品を出品して大賞を受賞するなど、イノベーティブに挑戦してきました。現在、絹産業は一番の斜陽産業のひとつと言われてはいますが、現在も養蚕から製まで絹産業の全てのサプライチェーンがあるのは庄内だけ。旧庄内藩士の歴史と精神性は今も大切に引き継がれている。それが「本物」と言うことができる理由の一つかもしれません。中歴史から学び、繋いでいくという考え方はホテルも同じだと思うんです。SUIDEN TERRASSEは開業わずか5年ではありますが、それでもこのホテルにはどんな歴史があって、先輩たちは今まで何を大切にしてきたか、そして私たちは未来に何を繋いでいくか、それを理解し考えた上で私たちも挑戦していくべきだと思います。大和そうですね。先ほども「本物の判断基準はいくつかある」と申し上げましたが、ナンバーワンであること、オンリーワンであること、本質的であることなど、人によって「本物観」は異なりますが、本物を目指す人の考え方の根底には「未来に繋げていく、子供たちに本物の価値を伝えていく」という思いがあるのではと感じています。私は絹産業の全てのサプライチェーンが庄内にあることを一つの「本物」と表現しますが、あるフランスのデザイナーは「作り手も、売り手も、買い手もみんなが幸せになることが本物だ」と言っていました。自分たちが良いと思う物を作るだけではなく、その先の人のことを考えることも「本物」たる理由になると思います。 中三方良し、とてもいい考えですね。「本物」を目指す人や業界の判断基準は異なるかもしれないけれど、それぞれに未来を見据えた理由づけがある。大和自分さえ良ければ良いという時代が長く続いていましたが、そんな時代はもう終わったと思います。松ヶ岡にも旧庄内藩士3,000人が毎日ここに通い2年の時間を掛けて開墾した歴史があって、これは一人では到底できなかったことです。「生きること」や「生かされていること」などと言うとオーバーかもしれませんが、本物を追求するためには「幸せとは何か」も同時に考える必要があると思いますし、本物を追求する方々と連携していかなければならないと思うんです。 中大和社長の今のお話に全てが詰まっていると思いますが、堀畑裕之さんと関口真希さんによるファッションブランド「matohu」さんとの「2024 S/S “命の糸” 」のコラボレーションはmatohuさんからの提案だったと聞きましたが、大和社長はどんな本物観を持つ方と一緒にやりたいと思いますか? 大和2010年に始まったkibisoのブランディングで、元東京ファッションデザイナー協議会議長でkibisoプロジェクトのプロデューサーを務める岡田茂樹さんがmatohu(注4)のお二人を連れてきてくれたことが、お二人との出会いでした。その時に工場で製糸の様子を見学した堀畑さんが涙を流して感動していたんです。「繭から1本の糸を引いて1500mの糸ができる頃、繭からさなぎが見えてきました。私はその様子に命を感じたんです」と。そして「今日この風景を見るまでは、テキスタイルの見本市で布を買って服を作ることが当たり前だと考えていた」と。 繭から絹糸を取るということはサナギを殺してしまうということ。でも、サナギを殺してしまうけれども、そこから絹糸という新しい命が生まれる。堀畑さんはそんな風に考えたようです。出羽三山にも現在・過去・未来の考え方がありますが、この体験を通して、堀畑さんは「命の循環」という本質的なことに行き着いたのではないかと思います。中彼らが「matohu/まとふ 」としているのは「身に纏(まと)う」という言葉からきているんですよね。大和そうです。単純に「着る」ではなく、「纏(まと)う」。衣服の歴史と意味をとても大切に考えているからだと思います。命について考えた時に、「精進料理は動物を殺さず植物だから良い」ではなく、何であっても私たちは命をいただいている、植物にも命がある。その本質を言葉や姿勢で説明できる人が本物なのではと思いますし、その理解があるからこそ、本物を作り出し、人を引きつける力があるのではないかと思います。本物であること、そして本物を見極める力最後は人であり、人の感性が求められる中元々「本物」を見極めることができる人がいる一方で、本物を見極める力を培っていくことはできると思いますか。大和本物を見極める力を培うことはできると思いますし、鶴岡シルクも「本物であること」を常に目指しています。子供たちが「本物が何かを判断できる」ようにしてあげたいんです。繊維でいえば本物を見極める基準は、着心地、風合い、色の深み、コク。絹織物職人だった私の父親はシルクに触れるだけで良いシルクかどうかを判断していました。でも私はこの業界に飛び込んだ当時は触っただけではシルクの良し悪しの判断ができませんでした。しかし今なら少しわかるようになりました。芸術も思考も、本物を見極められるようになるには先入観を持たず謙虚に先人たちが「本物」として守り繋いできたものを見て、触れて感覚を培う、その訓練だと思います。そうすると本物たる理由が少しずつ分かってくるんです。 中繊維業界に限らず、本物を見極めるには先人から何を学び、どう感性を伸ばしていくかですね。大和そうなんです。最後は人であり、人の感性だと思います。例えば織物の色に対しての感性はデザイナーさんごとに違います。特に布は光沢や質感も影響するので、PANTONEやDICなどで測るようなことができないんです。例えば「紺色」と一言で言っても、赤みを加えた色なのか、浅い色なのか、そして硬いのか、柔らかいのか。数値では測れないものがあります。だからこそ、私たちはデザイナーさんと感性を合わせて正解の色を出していくために技術を磨く必要があります。色の仕上がりは、人の目、感性で判断するんです。中今のお話をお聞きして、近年ホテル業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)化が一気に加速していますが、全てデジタル化すればOKではなく、本物のサービス、お客様へのホスピタリティはやっぱり人の感性が求められる、「人 対 人」だと改めて感じました。デジタル化が叫ばれている中でも、デジタルを活用していくからこそ、人の感性がより大切になっていき、人のリソースが際立っていくのではないかと思います。大和人間はロボットではないですよね。人間は人間らしいことを求める。そして人間だからこそ吹き込める命がある。そこはどんな時代も変わらないと思うんです。中さんが仰るように、人間がすべきこと、そしてデジタルをうまく使い分けることが必要だと思います。シルクの世界でも「職人技」と言いますが「アナログ的に手でやっているから職人技」ではないんです。織物は言ってみれば縦糸と横糸だけでできるものなので、デジタルを導入して簡素化できるのであればどんどん導入すべきです。そうすると職人が5年掛けて習得した技術を、新人が3ヶ月でできるようになることもあります。その時に大切なのは職人が技術をしっかりと明文化して伝え、次の世代に引き継いでいくことです。そして引き継いだ世代は、職人の技術をデジタルに落とし込んでいくかアナログを大切にするかどうかを都度判断し、更にはその選択の理由をしっかり説明できるようになるべきなんです。これは先人たちから引き継いだ「本物」を、今の時代に合うようにいかに修正していくかの工程でもあります。...
旅の楽しみはその土地に実際に足を運んで歴史や文化、自然に触れることですが、その地ならではの旬の食材やそこにしかない味に出会えることも旅の醍醐味。旅先で味わうだけではなくお土産に買って帰って余韻に浸る方も多いのではないでしょうか。中でも牛乳やチーズなどの乳製品も旅先で人気のご当地グルメです。SUIDEN TERRASSEが山形旅でお勧めしたい乳製品のお土産は、ミルクの風味と味わいが口いっぱいに広がる「蔵王チーズ」。宮城県のメーカーでありながら、宮城県民のみならず山形県民にとっても親しみのあるブランドです。当館レストランMOON TERRASSEで提供している人気メニュー・チーズケーキで利用しているだけでなく、オンラインストア「SUIDEN STYLE -旅の余韻をくらしの中に-」でも販売しています。「蔵王チーズ」は宮城県と山形県の県境、蔵王の山麓にある一般財団法人蔵王酪農センターによるチーズブランドです。それらの商品は主に宮城県内と山形県内で販売され、地域で親しまれています。「蔵王チーズ」の魅力について、30年間製造にも携わってきた蔵王酪農センター理事・営業部長である宮沢 秀夫さんにお話を伺いました。 蔵王山麓で搾られた生乳を100%使用こだわりの素材を生み出す、自然環境と酪農技術宮城県と山形県の県境にある蔵王山の宮城県側の麓に蔵王酪農センターが運営する、1980年に国内で初めて設立された蔵王チーズのナチュラルチーズ専門工場があります。「蔵王チーズの商品に使っている生乳は100%蔵王山麓産のものです。大量生産はできませんが、この地域の良質な素材にこだわっています」と宮沢さん。ミルクの香りが強く、素材の濃厚な味を楽しめるチーズはどのように作られているのでしょうか。 絶えず天然水が湧き出る豊かな自然環境の蔵王山麓にある牧場には約100頭の乳牛が飼育されています。チーズの味を左右する生乳の品質を守るために、工場では牛の飼育に細心の注意を払っています。 「牛舎内で自由に過ごせるフリーバーン方式を採用しているので、牛たちは低ストレスな環境で良質な生乳を作り出してくれます」「センターで搾った生乳の他、蔵王山麓の指定域内の生産者の生乳がチーズや牛乳に加工されます。また生乳の他、一番人気商品のクリーミースプレッドに使われている卵も地元産。平飼いで健康に育てられた鶏が産んだ、良質なものを選んでいます」また蔵王チーズが評価されるのは、恵まれた環境だけではなく、チーズのみならず酪農の研究に長年積極的に取り組んできたからこそ。設立当初から国産ナチュラルチーズの普及と酪農のあり方に真摯に向き合ってきた、蔵王チーズの目指すところとは?蔵王チーズが目指す国産ナチュラルチーズ界の発展と親しみやすいチーズの追求 実は、蔵王酪農センターはチーズ作りだけではなく、研究機関として発足したのが始まり。 蔵王チーズの母体である財団法人酪農電化センターは1960年(昭和35年)に神奈川県厚木市で設立し、 1964年(昭和39年)に酪農の機械化推進のため大規模草地酪農ができる土地を求めて蔵王町に110haの土地に移転、チーズ製造を開始した1980年に蔵王酪農センターとして団体名も変更しました。「最近では、各機関との共同研究を重ね3年もの歳月をかけて開発された麹菌で熟成させたチーズを、世界で初めて商品化することに成功しました。またチーズづくりの過程で出るホエイ(乳清)を使った飲料などの商品化で、食品残渣問題の解決にも取り組んでいます。さらに遊休農地や未利用資源の有効活用に向けた研究といった、酪農の専門研究機関としての役割も担っています」そして人材育成も積極的な取り組みのひとつ。「1980年に国内で初めてのナチュラルチーズ専門工場として設立して以来、40年もの間積極的に人材育成に取り組んできました。現在は年に5回のチーズ研修を行なっています。全国各地から、チーズについて学びたいという熱心な人が毎年多数応募してきてくれます。そこで講習を受けた方々は各地域でチーズ工房を営むなどして、オリジナルのナチュラルチーズを作っています」と宮沢さん。全国各地の酪農機関や大学と協力しながら研究を進め、さらには多くのチーズ職人を輩出している蔵王酪農センター。目指しているのは国内全体に国産ナチュラルチーズを普及させ、チーズ界、そして日本の酪農を発展させることなのです。職人として30年チーズを作り続けてきた宮沢さんがおすすめする食べ方とは? 「親しみやすいチーズを作りたい」という宮沢さん。酪農とチーズの研究と製造に長きに渡って携わり、それらに精通した宮沢さんから日々の食卓に取り入れたくなるチーズの食べ方をお聞きしました。「蔵王チーズの商品は、ミルクのやさしさが引き立つこと、そして食べやすさにこだわっています。この時期特にお勧めしたいチーズとその食べ方はシュレッドチーズで作るチーズフォンデュです。更にそこにゴーダチーズを加えることで風味が増し、トロリとした食感もより楽しめます。ホワイトシチューにクリームチーズをたっぷり混ぜてもおいしいです。他には鍋料理に麴チーズを少し加えると風味が際立ちます」と宮沢さん。チーズを使ったレシピを楽しそうに語る様子から、チーズをたくさんの人に楽しんでほしいという想いが伝わって来ます。 チーズの味わいと香りを楽しめるのは「スモークゴーダ」だそう。「桜のチップを使って、本格的に仕上げています。2年に一度行なわれる全国各地から200品以上のチーズが出品される“ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト”で、2017年と2023年に優秀賞を二度受賞したこともある自信作です」封を切った瞬間からスモーキーな香りが広がり、やや強めの塩気とそれに負けないミルクの味がしっかりと感じられます。「お酒に合うと評価いただくことも多く、最近ではお客様から食べ方を提案いただくこともあります。蔵王の湧水を使って淹れたコーヒーや、台湾のお茶との相性も良いと大変好評なんです」とのこと。地域に密着しているからこそお客様の声が近い距離で届き、商品開発にもつながっていきます。「現在全国には300以上のチーズ工房があり、個性豊かなチーズが多数出て来ています。一方でチーズの食べ方の開発と楽しみ方の提案はまだまだできる余地があります。今後は和食に合わせられる、日々の食卓に出せるチーズを開発していきたいんです」とのこと。進化し続ける蔵王酪農センターの取り組みは、国内のナチュラルチーズの普及に大きく影響していると言っても過言ではありません。 旅先で出会って心を動かされたその地ならではの味覚を、旅から戻った日常の中でも取り入れたくなる経験をしたことがある方も多いかもしれません。チーズやバターなどの乳製品もまた、旅先での出会いをきっかけに日常のお気に入りのラインナップに入れるのにおすすめです。コラムで紹介した蔵王チーズの商品は、当館レストランMOON TERRASSEのスイーツで体験いただけるだけではなく、オンラインストア「SUIDEN STYLE -旅の余韻をくらしの中に-」でも販売しています。「シュレッドチーズ」は単品、「スモークゴーダ」は蔵王チーズ4種セット(Aセット)での販売となります。ぜひお試しください。
例年よりも長い夏がやっと終わったと思ったのも束の間、風が吹くと肩をすくめてしまうほど、一気に寒さを感じるようになりました。先日鳥海山と月山で初冠雪が観測され、刻一刻と冬が近づいているのがわかります。稲刈りを終えた田んぼは、来年の稲作のための土づくりの時期に入りました。黄金色の稲穂が刈り取られた風景はどこか寂しげにも見えますが、昔ながらの方法で稲を自然乾燥させる稲架(はさ)掛けをしている田んぼもあり、その風景は米どころならではの秋らしい風情を感じさせます。 年間を通して美しい風景を見せてくれる田んぼと、そこで収穫された美味しいお米は、庄内の人々にとって心の拠り所となる欠かせない存在です。全国有数の米どころの庄内も、今まさに新米のシーズンを迎えています。SUIDEN TERRASSEの館内SHOPとオンラインサイトでも、全国にファンがいる鶴岡市の米農家(株)井上農場さんの新米の販売が開始しました。食べる人の笑顔のために米づくりに徹底的にこだわる(株)井上農場山形県庄内地方は、青森県より連なる出羽山地と、秋田県との県境にある鳥海山に囲まれた平野です。雨量・降雪量がともに多いため、地下に浸透しろ過された伏流水が山や海などで湧き出しています。また春先には雪解け水が山形県内を流れる最上川や赤川に流れ出します。豊かな土地と豊富な水、そして昼夜の温度差が、庄内を米どころとして発展させました。今年の夏は記録的な猛暑や水不足により全国各地の一次産業が打撃を受けました。農業も例外ではなく、庄内地域の農家の皆さんからも作物の不作や収穫量の減少などの声が聞こえてきます。今年の稲作やお米の出来はどうだったのか、(株)井上農場代表の井上 馨さんからお話を聞きました。 庄内地方の真ん中、鶴岡市藤島にある(株)井上農場。「55ヘクタールある(株)井上農場では、主食用の米5品種と酒米4品種を育てています。すべて農薬や化学肥料の使用をできる限り抑えて栽培する特別栽培米です。 農薬や化学肥料の一般的な使用量を5割以上抑え、有機質肥料と、漢方薬と蜂蜜を使った自然由来の活力剤で育てています。これらの栄養で稲が元気に育ち、色も良くなるんです」と井上さん。 愛情を込めて育てたお米はJA(農協)に頼らず、自社で全量精米販売をしているとのこと。しかし今年は全国的に猛暑の影響が大きく、(株)井上農場でも例年にない状況だったと話します。「農業を始めて53年になりますが、今年は過去にない気象条件の厳しい年でした。稲作に限らず、様々な作物の生産者が苦労しました。特に深刻だったのが降水量不足でしたが、うちの田んぼは月山水系の水を引いているお陰で、なんとか被害を最小限に抑えることができたんです。このような状況のため、周りの農家と連携しながら作業を進めることも必要でした」厳しい気象条件の中でも、「今年もいい米ができた」と井上さんが自信を持って言い切れるのは、井上さんが50年以上の歳月をかけて培った稲作のノウハウと地域の連携があったからこそ。「種まきから丁寧にやっています。田植えは、稲1本1本の根本まで風通しがあって日当たりの良い環境を作るために、植え付ける苗の本数をあえて少なくして、稲同士の間隔も空けるようにしているんです。一般的には1株7本〜10本を植えるのが目安で一坪あたり70株~80株を植えるところがありますが、(株)井上農場は1株5本、一坪あたり50株~70株としています。稲にとって良い環境を作ってあげることで害虫が付きにくくなるので、結果的に農薬使用量の減少にも繋がるんです。たくさん植えて収穫量を増やすこともできるけど、稲の環境が悪くなると殺虫剤や農薬もたくさん使うことになってしまうので、(株)井上農場ではこの方法を採用しています」安心・安全を大切にしながら、のびのびと育てた稲は粒が大きくしっかりとしたお米になります。 収穫したお米は一般的には農協のライスセンターへ持ち込む農家が多い中で、(株)井上農場ではすべて自社のライスセンターで乾燥・調整をします。調整後のお米は鮮度を保つために真空状態で袋詰めにします。白米だけでなく、玄米も販売しています。パッケージは大きいサイズが2.5kgで、お米の酸化を防ぎ湿気や臭いからも守ることができるジッパー付きのものを採用しているので、最後まで美味しく召し上がっていただけるそう。ドローンを使用した自然由来の農薬散布、自動抑草ロボ「アイガモロボ」を用いた有機米栽培の試験と、新しい取り組みを次々と行なっている(株)井上農場。現在は自然にやさしいパッケージを採用したいと考案しているそう。種まきから田植え、稲刈り、精米、袋詰めまで丁寧に行なわれるお米。それらはすべて「食べてくれる人を想像しているからできることなんです」と井上さんは語ります。「安心して心から美味しいと言ってもらえるものを届けたい」その強い想いが、井上さんの手間暇を惜しまない米づくりに溢れていると、お話を伺っていて感じました。(株)井上農場が育てたお米は、香り、粘り、輝き、味、どの項目においても優れた品質が認められていて、5年連続で出品している「米・食味分析鑑定コンクール」では出品した品種全てが全国3位や特別賞などを受賞。確かな品質が認められています。(株)井上農場が自信を持っておすすめする全国トップレベルのつや姫と雪若丸の新米販売開始「猛暑の影響があったものの、今年の米も粘り、旨みともに非常に良いものができました。今頃の新米販売開始から年内いっぱいまでが一番多く注文をいただく時期ですが、お陰様で、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地から注文をいただいています」そもそもお米は野菜と同様に生鮮食品に区分されており、新鮮で温度・湿度管理がしっかりされている(株)井上農場さんの新米が人気なことも納得です。全国的な知名度と人気を誇る「つや姫」 (株)井上農場さんがメインで生産・販売するお米は「つや姫」と「雪若丸」の2つのブランド米。他にもはえぬき、コシヒカリ、ひとめぼれと、幅広く生産・販売しています。つや姫はブランド名の通り艶が美しく、品の良い甘みと旨み、粘りと弾力が強いのが特徴で、初めてつや姫を食べた人は「今まで食べていたお米とは別物」「ご飯が食卓での主役になった」などと感動する人も多いそうで、今やつや姫人気は全国に広がっています。 炊き立てはもちろん、冷めてもおいしいのでお弁当やおにぎりにも推奨される品種です。しっかりした粒感でおかずの味を引き立てる「雪若丸」雪若丸は、つや姫の弟をイメージさせるブランド米として生まれました。 力強い稲穂が特徴で、お米は雪のように白く美しく名前の由来にもなっています。粒の食感がしっかりあり、 粘りと硬さのバランスが取れたあっさりとした上品な味わいは、どんなおかずとも相性抜群。お寿司のシャリにもぴったりのお米です。 館内SHOPとオンラインストアで販売開始品種ごとの味や特徴を楽しんでもらいたい お米は新鮮かつ管理の徹底が大切だと言われていますが「より美味しく召し上がっていただくためには、自分自身にとって美味しい水加減を知ることも大切です」と井上さん。「炊飯器で炊く場合は事前に決められた水分量で炊くのが一般的ですが、水の量を調整しながら炊いてみて自分にとって美味しいと思える水分量を知ることで、さらに美味しいご飯に出会えるはずです。炊き立てもおすすめですが、つや姫と雪若丸は冷めても美味しいので、おにぎりやお弁当にすると絶品です」SUIDEN TERRASSEの館内SHOPとオンラインサイトで販売する(株)井上農場さんの「いのうえ農場新米ラインナップ」は下記の通りです。ーーーーーーーーーーーーーーーーつや姫約13合(2kg)5合(750g)玄米2合(300g)雪若丸 約13合(2kg)5合(750g)玄米 2合(300g)ーーーーーーーーーーーーーーーー 特に新米は一粒一粒の水分量が多いため、艶があってもちもちとした食感。また新鮮な分、旨みと甘みを存分に味わえます。一年で一番美味しい新米だからこその味わいをぜひ体験してください。 一番少量の単位で2合ずつ袋詰めされたセットもあるので、つや姫と雪若丸の食べ比べをしても楽しいかもしれません。 春は水を張った水面が輝き、夏から秋にかけて青々とした田んぼが黄金色に変化し、冬にはしんと静まり、雪で一面真っ白になる田んぼ。 そんな米どころならではの景色の移り変わりを思い浮かべながら、庄内を代表するお米をぜひ味わってください。【オンラインストア SUIDEN STYLE】(株)井上農場 新米販売ページはこちらhttps://style.suiden-terrasse.com/collections/frontpage【企業Data】株式会社井上農場住所:999-7683 山形県鶴岡市渡前字白山前14公式サイト:https://inoue.farm/