旅の楽しみはその土地に実際に足を運んで歴史や文化、自然に触れることですが、その地ならではの旬の食材やそこにしかない味に出会えることも旅の醍醐味。
旅先で味わうだけではなくお土産に買って帰って余韻に浸る方も多いのではないでしょうか。
中でも牛乳やチーズなどの乳製品も旅先で人気のご当地グルメです。
SUIDEN TERRASSEが山形旅でお勧めしたい乳製品のお土産は、ミルクの風味と味わいが口いっぱいに広がる「蔵王チーズ」。
宮城県のメーカーでありながら、宮城県民のみならず山形県民にとっても親しみのあるブランドです。
当館レストランMOON TERRASSEで提供している人気メニュー・チーズケーキで利用しているだけでなく、オンラインストア「SUIDEN STYLE -旅の余韻をくらしの中に-」でも販売しています。
「蔵王チーズ」は宮城県と山形県の県境、蔵王の山麓にある一般財団法人蔵王酪農センターによるチーズブランドです。
それらの商品は主に宮城県内と山形県内で販売され、地域で親しまれています。
「蔵王チーズ」の魅力について、30年間製造にも携わってきた蔵王酪農センター理事・営業部長である宮沢 秀夫さんにお話を伺いました。
蔵王山麓で搾られた生乳を100%使用
こだわりの素材を生み出す、自然環境と酪農技術
宮城県と山形県の県境にある蔵王山の宮城県側の麓に蔵王酪農センターが運営する、1980年に国内で初めて設立された蔵王チーズのナチュラルチーズ専門工場があります。
「蔵王チーズの商品に使っている生乳は100%蔵王山麓産のものです。大量生産はできませんが、この地域の良質な素材にこだわっています」と宮沢さん。ミルクの香りが強く、素材の濃厚な味を楽しめるチーズはどのように作られているのでしょうか。
絶えず天然水が湧き出る豊かな自然環境の蔵王山麓にある牧場には約100頭の乳牛が飼育されています。チーズの味を左右する生乳の品質を守るために、工場では牛の飼育に細心の注意を払っています。
「牛舎内で自由に過ごせるフリーバーン方式を採用しているので、牛たちは低ストレスな環境で良質な生乳を作り出してくれます」
「センターで搾った生乳の他、蔵王山麓の指定域内の生産者の生乳がチーズや牛乳に加工されます。また生乳の他、一番人気商品のクリーミースプレッドに使われている卵も地元産。平飼いで健康に育てられた鶏が産んだ、良質なものを選んでいます」
また蔵王チーズが評価されるのは、恵まれた環境だけではなく、チーズのみならず酪農の研究に長年積極的に取り組んできたからこそ。
設立当初から国産ナチュラルチーズの普及と酪農のあり方に真摯に向き合ってきた、蔵王チーズの目指すところとは?
蔵王チーズが目指す国産ナチュラルチーズ界の発展と
親しみやすいチーズの追求
実は、蔵王酪農センターはチーズ作りだけではなく、研究機関として発足したのが始まり。
蔵王チーズの母体である財団法人酪農電化センターは1960年(昭和35年)に神奈川県厚木市で設立し、 1964年(昭和39年)に酪農の機械化推進のため大規模草地酪農ができる土地を求めて蔵王町に110haの土地に移転、チーズ製造を開始した1980年に蔵王酪農センターとして団体名も変更しました。
「最近では、各機関との共同研究を重ね3年もの歳月をかけて開発された麹菌で熟成させたチーズを、世界で初めて商品化することに成功しました。またチーズづくりの過程で出るホエイ(乳清)を使った飲料などの商品化で、食品残渣問題の解決にも取り組んでいます。さらに遊休農地や未利用資源の有効活用に向けた研究といった、酪農の専門研究機関としての役割も担っています」
そして人材育成も積極的な取り組みのひとつ。
「1980年に国内で初めてのナチュラルチーズ専門工場として設立して以来、40年もの間積極的に人材育成に取り組んできました。現在は年に5回のチーズ研修を行なっています。
全国各地から、チーズについて学びたいという熱心な人が毎年多数応募してきてくれます。そこで講習を受けた方々は各地域でチーズ工房を営むなどして、オリジナルのナチュラルチーズを作っています」と宮沢さん。
全国各地の酪農機関や大学と協力しながら研究を進め、さらには多くのチーズ職人を輩出している蔵王酪農センター。目指しているのは国内全体に国産ナチュラルチーズを普及させ、チーズ界、そして日本の酪農を発展させることなのです。
職人として30年チーズを作り続けてきた
宮沢さんがおすすめする食べ方とは?
「親しみやすいチーズを作りたい」という宮沢さん。
酪農とチーズの研究と製造に長きに渡って携わり、それらに精通した宮沢さんから日々の食卓に取り入れたくなるチーズの食べ方をお聞きしました。
「蔵王チーズの商品は、ミルクのやさしさが引き立つこと、そして食べやすさにこだわっています。この時期特にお勧めしたいチーズとその食べ方はシュレッドチーズで作るチーズフォンデュです。更にそこにゴーダチーズを加えることで風味が増し、トロリとした食感もより楽しめます。ホワイトシチューにクリームチーズをたっぷり混ぜてもおいしいです。他には鍋料理に麴チーズを少し加えると風味が際立ちます」と宮沢さん。
チーズを使ったレシピを楽しそうに語る様子から、チーズをたくさんの人に楽しんでほしいという想いが伝わって来ます。
チーズの味わいと香りを楽しめるのは「スモークゴーダ」だそう。
「桜のチップを使って、本格的に仕上げています。2年に一度行なわれる全国各地から200品以上のチーズが出品される“ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト”で、2017年と2023年に優秀賞を二度受賞したこともある自信作です」
封を切った瞬間からスモーキーな香りが広がり、やや強めの塩気とそれに負けないミルクの味がしっかりと感じられます。
「お酒に合うと評価いただくことも多く、最近ではお客様から食べ方を提案いただくこともあります。蔵王の湧水を使って淹れたコーヒーや、台湾のお茶との相性も良いと大変好評なんです」とのこと。
地域に密着しているからこそお客様の声が近い距離で届き、商品開発にもつながっていきます。
「現在全国には300以上のチーズ工房があり、個性豊かなチーズが多数出て来ています。一方でチーズの食べ方の開発と楽しみ方の提案はまだまだできる余地があります。今後は和食に合わせられる、日々の食卓に出せるチーズを開発していきたいんです」とのこと。
進化し続ける蔵王酪農センターの取り組みは、国内のナチュラルチーズの普及に大きく影響していると言っても過言ではありません。
旅先で出会って心を動かされたその地ならではの味覚を、旅から戻った日常の中でも取り入れたくなる経験をしたことがある方も多いかもしれません。
チーズやバターなどの乳製品もまた、旅先での出会いをきっかけに日常のお気に入りのラインナップに入れるのにおすすめです。
コラムで紹介した蔵王チーズの商品は、当館レストランMOON TERRASSEのスイーツで体験いただけるだけではなく、オンラインストア「SUIDEN STYLE -旅の余韻をくらしの中に-」でも販売しています。
「シュレッドチーズ」は単品、「スモークゴーダ」は蔵王チーズ4種セット(Aセット)での販売となります。ぜひお試しください。